蝶々 

小刻みに蝶に纏わりつく虚空



蝶飛んで視野に小さな琴鳴りぬ



人体もシンメトリーに蝶真昼



ようやく去りぬ点滴の痣の蝶

先日病院で、インターンらしき若い男の先生に点滴をされた。思った通り、下手だった。最近は、注射や点滴の針を刺すのは、看護婦さんの方が大抵上手い。他に尋常でない症状ですでに辟易しているのだから、点滴くらい無痛でしてほしいものだ。
遠慮なく失敗を繰り返す先生に、遠慮なく
「痛いですー」と言った。
「看護婦さーん、替わって、お願い」という言葉をぐっと飲み込み、我慢していると、「はーい、」という先生の明るい声。やっと刺し終えたかと安心したら、「ちょっと違う場所にしますねー」と明るい声。

全てが終わった後、私の腕の内側には、点滴で失敗した後が、どう見ても蝶の形の痣になって残った。
数日の間、私の腕には紫色の蝶々が棲んでいた。
そしてふと見ると、
それが音もなく、半分になり、微かになり、やがて完全に消えた。

完全に消えた時、私は自分のまっさらな腕が、妙に新鮮だった。私は時々袖をめくって、自分のなんだか新鮮な腕を見ては、満足した。



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蝶花へ内緒話の軽さかな

蝶の美しさというのは、あの得も言われぬような軽々とした動きを含めてのものだと、思う。
それは見ても見ても飽きない金魚や熱帯魚の動きや、鳥たちの飛翔の、完璧に滑らかな無駄のない動き、蜻蛉の水中を切り分けていくような動き、コスモスと風のどっちがどっちだか分らぬような親密な関係、そんなものたちと同類な美しさだ。

ベランダに花の寄せ植えをすると、3階なのにもかかわらず、時々蝶が訪れてくれる。
春なら小さな紋白蝶や紋黄蝶がひらひらやってくると、その小さく震えるような軽々とした動きが、周りの空気や光にも伝染するようで、見ている私の気持ちも、浮きたってくる。
暑くなってくると、揚羽蝶、中でもアオスジアゲハや黒アゲハの美しさは、ジャンルが違って、エレガントな大人の美しさだ。
大きさも大きいから、飛ぶ動きもゆったりとしていて、大御所の女優のようだ。
黒いものは、炎暑の中でいきなり見ると、思いっきり涼しい。木陰のようでもある。
私は息をひそめて、じっと家の中から見つめている。

野生動物もそのしなやかで堂々とした動きには、見とれてしまう。
さすがにこの辺の野良猫は、ちょっと姑息な動きである。

人間だったら、スポーツの中でも特にスイミングやフィギア・スケート、様々な舞踏、それから、何と言っても、子供の動き。3,4歳がピークかな。段々達者になってくるから、可愛さは目減りしてゆく。

3,4歳の女の子なんていうものは、動きそのものが、もう重力に反しているというか、妖精じみていて、「ホントに体重ある?」って訊きたくなる。それから、こころがそのままスムースに頭脳を通過せずに、身体の動きに現れている、だからあんなに動きそのものが可愛らしいんだと思う。

先日図書館のトイレの洗面所で、そういう可愛さオーラをしょってる、4歳くらいの女の子と隣り合わせた。
お父さんが外で待っているようだった。
女の子は髪が長くて、撫子色のワンピースを着ていた。
まだ小さいから、洗面台を抱え込むようにして、一生懸命に手を洗っている。
なんだか蝶々が花の前で手をこすり合わせているみたいだ。
石鹸水を出そうとしているのだが、その華奢な手の力では、なかなかプッシュしても出てこない。だが慌てず、ゆっくりと何度も繰り返している。

「石鹸水出すの?」と聞くと、何にも言わない。
人見知りなのかもしれないけど、こういうご時世だから、「知らない人とむやみに口をきいちゃだめだよ」と言い含められている子も多いだろう。
私は「いいかな、出すよ」と言うと、女の子の小さな手に、石鹼水をプッシュした。
女の子はじっと下を向いたまま、私を見ずに手を洗って、私を見ずに、私の後ろをすり抜けて、軽々と素早く出て行った。





覚めやらぬ睡りさえずり抱いている



囀りや遠い記憶を埋めた場所



深海のような御空へ八重桜



涙目でドラマ見ている八重桜






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いつもご訪問頂きありがとうございます。 「俳句とエッセイ時々音楽」のブログ名を、「A Cup of俳句」に改名させていただきます。宜しくお願いいたします。 また、当ブログ内に埋め込んでいた音楽配信動画のうち、違法にアップされたものは削除いたしましたが、公認されているものも色々ありましたので、再度少しづつ載せていきたいと思います。ジャズ・ロック・クラッシック、ジャンルは問いませんが、心に沁みるアコースティックなものをコラボ。

プロフィール

ネコヤナギ

Author:ネコヤナギ
俳句は一行詩。コンパクトな宇宙です。それと日々出会う物・事を気ままに綴り、ジャンルにこだわらない音楽のことも少し。俳句は1994年から書き溜めていたものを2017年1月から遡ってまとめました。
50代後半、双子座・A型・主婦兼グラフィックデザイナー。在宅ワーカーです。
趣味は俳句・デザイン・音楽・手織り。最近ホロスコープの奈落に足を突っ込んでいます。

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