静かな桜 2017/4

ヨー・ヨー・マとキャサリン・ストット(Yo-Yo Ma&Kathryn Stott ) 「チェロとピアノのためのロマンス/ディーリアス(Romance for Cello and Piano/Delius)」
桜の柔らかな雰囲気に合う曲だと思う。特に夕桜や夜桜のイメージ。





ゆらゆらと風の洗えるさくらかな



静けさの遠い扉が開くさくら


「静かなもの」といったら何を連想するか。
考えたら、中々浮かばないことに、我ながら驚いた。 それはまあ、「静か」というからには、目立たず、意識に上りにくいということはあるだろうけれど、そこまで喧騒に満ちた、ゆとりのない毎日だったのだろうか。
さんざん考えて思い当たったのは、細い針のような小雨が降っている時の感じ。それから、早朝の家族が寝静まっている時間の、目覚まし時計の秒針のかすかに涼しい音。あとは、雪かな。

夫にも聞いてみた。すると、「うーん、思い浮かばないな」と言う。
息子に聞いたら、「扇風機が止まった時」と言う。
なるほど、あれは何かささやかな安らぎのようなものが、ある。

桜はどれほど盛大に満開であっても、隅から隅まで、みっしりと静けさが満ちている。
本当に不思議だ。
咲いているのは、静けさだ。
散っているのも、静けさだ。

静かにやわらかな、たましいだ。



20174g.jpg





花の下人入れ替わり立ち替わり



桜満開わたしはもぬけの殻



天と地の間合いに咲いてさくらかな



漆黒の鴉さくらを飛び立ちぬ



散るさくらごしに見ている咲くさくら


今年は桜に会いに行くタイミングがうまくいかなかった。
近くになかなかの桜の見どころがあるのに、時間があって出かけられると、まだ咲いてなかったり、三分咲きだったり、どうも今年は寒いせいか、いつもより開花が遅かったようだ。天候も悪い日が多かった。
さあ晴れた!という日は決まって予定があり、多忙だった。
さあ暇だ!という日は決まって雨なのだった。
天気予報で、明日なら悪くないし、予定も何もない。さあ、明日こそと思っていたら、よりによって、心臓の頻拍発作でいつもの救急センターに行く羽目に。なんということだ。

何かの拍子に、心臓がいつもの倍テンポで打ち始めたら、もうどうしようもない。
速くなったり、遅くなったりとかならまだいいけれど、もうシンセドラムか何かのように、160前後の脈拍がびくともせずにつっぱしるのだからたまらない。病院に行く支度をするのにも、頭が働かず、時間がかかる。
心臓を一時的に止めるという薬を点滴するのだが、それが物凄く苦しい。大声をあげてしまう。だが、わーわー言ってるうちに、すぐにその苦しさは終わる。そこで、治る時は治るし、治らなければ、再度挑戦。1回から3回くらいで大抵おさまる。
昔は5,6年に一度くらいしか起きなかったのだが、最近1年に何回か起きたりするので困る。
だが心臓に異常があるわけではなく、あくまでも不整脈の一種らしい。
カテーテルを使って、心臓周辺のなにがしかの部分を焼き切る治療を勧められているのだが、他の持病というか体質と兼ね合わせて考えると、難しい面があり、なかなかそれを決行する決心がつかない。

夫の車で救急センターへ行く途中、沢山桜のある公園を横目に過ぎた。
現金なもので、あんなにさくら、さくらと思っていたのに、桜は曇ったガラスを通して見るように、ぼんやりと遠いものだった。

しかし治療が終わっていつもの尋常な自分に戻ったらもう、桜が見たかった。
まだ元気はなかったのだが、少し花見をさせてほしいと夫に頼んで、コンビニでパンやコーヒーを買い込んだ。
すると今度は夫の車のガソリンが怪しくなってきた。ガソリンスタンドも最近減ったし、少し遠いので、私はいつも行く図書館で待っていることになった。
しかし、待っている間に今度は空模様がおかしくなってきた。
やっと来た夫の車に乗り込むと、なんと車の調子が悪いので、今日は帰った方が無難という展開になった。
どうにも間の悪い、今年のさくら。 さくら遁走曲。

だが翌日は晴れて、やっと私は桜に会いに行くことができた。
ひとりで、思う存分、平日の花見客のいない桜を堪能した。
もう散り始めていたが、そこがまた良かった。
真っ黒な鴉が一羽、桜の大木に降りたった。薄紅との色のコントラストが斬新というか、目が覚めるようにきれいだった。若冲が見たら描いたかもしれない、などと思ったり。
鴉というものは、桜が満開の時に、何かやっぱり感じるものがあるのだろうか、などど思って、しつこくじっと見ていたら、居心地が悪かったのか、無礼者!という感じで、すぐに飛び去ってしまった。

散る花の中を、小学生や女子高生が歩いて行った。
テニスラケットを持った若者も、おじいさんも、野良猫たちに餌をやりに来るおばさんも、犬の散歩をしている女性も、皆が散っている花びらを、髪や肩にそっとのせて、花の雨の中を、歩いて行った。





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いつもご訪問頂きありがとうございます。 「俳句とエッセイ時々音楽」のブログ名を、「A Cup of俳句」に改名させていただきます。宜しくお願いいたします。

プロフィール

ネコヤナギ

Author:ネコヤナギ
俳句は一行詩。コンパクトな宇宙です。それと日々出会う物・事を気ままに綴り、ジャンルにこだわらない音楽のことも少し。俳句は1994年から書き溜めていたものを2017年1月から遡ってまとめました。
50代後半、双子座・A型・主婦兼グラフィックデザイナー。在宅ワーカーです。
趣味は俳句・デザイン・音楽・手織り。最近ホロスコープの奈落に足を突っ込んでいます。

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