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囀り

囀り

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本日の1曲/Simone Kopmajer - Come fly with me


髪解けば囀り零れ落ちてくる



囀りや昨日の冷えの残る家



囀りの一樹の影が充実す



パイナップルの缶開いて囀れる



見えずとも鮮やかなりし囀りぬ


溌剌とした囀りのする方を見ても、その囀りが見える訳ではない。
鳥の姿も見えない。ただ煌めくようなその声の鮮やかさに、魅惑されているばかりだ。

囀りにもし色があったら、それは何色なのだろう。
時刻や場所にもよるだろう。鳥の種類にもよるだろう。

一般的には、暖色系や金、銀かなと思っていた。
輝いているような光を感じるからだろうか。黄色からオレンジ色へのグラデーション、その辺が想像しやすいと思っていた。

囀に色あらば今瑠璃色に      西村和子

この俳人は、「瑠璃色」だと言う。
瑠璃色というのは、宝石のラスピラズリの色で、わずかに紫がかった鮮明な深い青。

しかも「今」とある
陽光の輝く中で聴いていた囀りが、ふと日が翳って、涼しい、瑠璃色に思えたのかもしれない。

庭木や街路樹の囀りと、森林の中などの囀りでは、また全くイメージが違う。
自分の家や街で聴く囀りは、明るくて日常的な暖色系のイメージが強いかもしれないが、澄み切った大気の森林の真っ只中では、清らかな青や緑などの寒色系に聞こえそうだ。

群青といふ名の囀りを聞いてゐし      安東次男

群青だという俳人もいる。
深い山の翳りの中の、水や木々や風や、そんなものと一緒に、交響楽のようになって聞こえてくる囀りは、群青色なのだろう。

私の住んでいる街の駅前に、夕方になると沢山の雀が集まって来る木が一本あって、大変な囀りの大合唱となる。
たまたまそういう時に通りかかると、私にはどう見ても、囀りを含めたその木全体が、金色に輝いているように思えて仕方ない。
夕刻の西日が当たっているせいもあろう。しかしその賑やかな囀りの、大きく緩やかな塊は、眩い金色に煌めいているようにしか、思えないのだ。


前略と書いてより先囀れり     岡田史乃

囀りや母となりたる妻ねむる       山崎ひさを

囀りと聞きとめしとき目覚めけり     林翔

囀りの夢の出口にゐたりけり      島田和子  






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柔らかく息をしていて桜散る



花散りぬ人それぞれの荷物かな



風光る草に自分を明け渡す



風光る巨大な花を虫急ぐ



朧月ゆっくり願望遠くなる



サイネリア美男の微笑精密に


時々行くブックカフェの店員は、どういうわけか美男美女が多い。
とりわけ一人の若い男性が、抜きん出て美男子である。

また抜きん出ているのは容貌だけではなく、喫茶店の給仕としての立ち居振る舞い、その表情などが、非の打ちどころがなく完璧なのである。
あまりにも完璧な丁寧さ、謙虚さ、にっこりと微笑む時の、心のこもった様子、それらの調和のとれたリズム感、なんだかお客の方がたじたじとしてしまう。

プロ意識なのだろうか。
しかしそういうあざといものを感じさせない。あくまでも端正な微笑みは明るいのだ。

でもいつも思ってしまう。
疲れない?
家へ帰って、ぐったりしないのかな。
ほら、もう一人の男の子みたいに、一生懸命だけど、ちょっとぶっきらぼうの尻尾が出ているくらいの方が、疲れないんじゃない。

いやいやもしかして、俳優志願なのかもしれない。それなら演技に見えないような演技を修行できて一石二鳥だ。

しかし、見ていると女客は皆、彼の問いかけへの返事の声が、ワントーン高いような声ばかり。
女の子の店員たちも、コロコロと鈴のように朗らかな声で、いかにも嬉しそうに一緒に仕事をしている。

うーん、ああやって一日中女性たちの暖かい眼差しや、ワントーン高い声にずっと囲まれていたら、自然、自分の方もトーンがやや高くなるってものかもしれない。

それで少々ハイな接客になるのかもしれない。
そして恒常的に機嫌も良く、あのリズミカルで完璧なサービスを、不自然にならずに提供できるのかもしれない。



聞こえないふりをしている春の闇



花冷えや心にもある地層かな



春愁の扉の重き百貨店



シャボン玉最後のひとつ塀を越す



菜の花に電信柱続くのみ


電信柱っていうものは、時にはやけに頼もしい感じがする。
宮沢賢治の童話のように、元気良く行進し出したとしても不思議はない。
うわーっと菜の花が咲いているような場所で、抜けるように青い空に、黒々と力強い電信柱が、何処までも続いている。
そんな場所に出会うと、理屈抜きでエネルギーがチャージされる。

線路の枕木なんかもその仲間だ。
どこまでも、単調に、黒々と続いてゆくもの。

どういうわけだか、こういうものたちが、菜の花にとっても似合うのだ。








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お知らせ

いつもご訪問頂きありがとうございます。 「俳句とエッセイ時々音楽」のブログ名を、「A Cup of俳句」に改名させていただきます。宜しくお願いいたします。

プロフィール

ネコヤナギ

Author:ネコヤナギ
俳句は一行詩。コンパクトな宇宙です。それと日々出会う物・事を気ままに綴り、ジャンルにこだわらない音楽のことも少し。俳句は1994年から書き溜めていたものを2017年1月から遡ってまとめました。
60代突入・主婦時々グラフィックデザイナー。在宅ワーカーです。
趣味は俳句・ガーデニング・音楽・デザイン。

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