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初桜・桜

初桜

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今日の1曲/BILL EVANS "Danny Boy" (Londonderry Air) Piano solo


初桜空に小さな不安かな



慣れぬ靴少し痛くて初桜



初桜夜の校舎に灯がひとつ



初桜してみたかった質問を



まだポケットに開かぬメール初桜












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人声のふととぎれをり花満ちる



陽も風も音も吸い込み桜かな



さくら咲き時計この頃遅れがち



昼と夜繰り返してまた桜かな



桜咲く湯飲みにお茶を注ぎ過ぎて



血液が少し足りない朝桜



人違いしている満開の花の下


昨夜コンビニに行ったついでに、少し桜のある近所の小学校へ足を伸ばした。
おおー、咲き出している、気遅れがちに、可憐な桜が。
半分は蕾といったところか。
初桜である。

明日昼間に、そのすぐそばの、中学校へ行ってみよう。
この辺では知らぬ人のいない中々の桜の名所。樹齢60年と言われる桜の大木が深々と、また高々と重なり、見る人を圧倒する迫力である。

果たして、次の日は朝から調子が悪かった。
頭痛のような肩こりが、たまに来る。
これは正しい肩こりではない。頑固で、容易に取れないくせに、移動する。PC稼業の身であるから、作業を終えた深夜に入浴し、そのあと肩こりをとるストレッチまでまじめにやり、体をほぐしてから寝たのに、起床時からガンガンと。

こいつは肩こりの変化球というか移動性低気圧みたいなやつで、季節の変わり目なんかにひょっこり出現する。
身心の冷え、つまり体の冷えと、心の冷えと、両方が同じ結果となって、何だかわからないが、紫色のゼリーのようなものが、体内の一部にとりつく、と私は仮定している。
すると、そこの血液循環が悪くなり、痛みが出たり、凝り固まったり。
頭にとり付けば頭痛になるし、お腹にくれば下痢をするし、足に出ればただ歩いているだけでも痛む。
いかようにも変身する紫色の虚血性?ゼリー。

こいつが来たら、もう仕方ない。相手にしすぎれば症状は強くなるが、その辺の扱いは難しい。
相手にしないように努めれば努めるほど、臍を曲げて逆襲してくるからだ。
だから、コントロールしようとしても無駄だ。ひたすら、「何かのはずみ」で治るのを待つしかないのだ。

その紫色の変化球肩こりを抱えたまま、私は中学校に桜を見に行った。

だんだん近づくにつれ判明したことは、こちらの桜は、小学校の方の奥ゆかしい桜と違って、なんともう満開になっているということだ。
ううっ、今回のブログは初桜でやるつもりでいたのに、もう句も作ったのに、どうしてくれよう。
満開の桜はその次の回にしようと考えていたのに。
言わずもがな、初桜とはその年に初めて目にした桜のことだが、私の中では、蕾の開きかけている2分咲きくらいの桜のイメージがあって、満開の桜と区別して詠むことにしている。

ぽつぽつ人も見に来ている。
誰もが携帯を掲げている。

中学校の正門が桜の群れとともに近づいて来るともう、あまりの美しさに胸がいっぱいになって、少し歩いてはつい立ち止まり、立ち止まり、酔っ払いのように歩いていると、

前から真っ直ぐにこちらに向かってきた女性が、私を見て微笑みかけた。
それは微かなものではなく、鮮明で、明るかった。公然としていた。

見れば、子供が小さい時PTAで一緒だった、Tさんではないか!
住んでいるのもこの近所だし。
なんとなく、彼女が若返っているような気はしたが、私は懐かしさに思わず親し気な声を上げた。
「ワーッ!」
この後には言わずもがな、「久しぶり!」という一言が控えていた。

ことろが、私に向かってはっきりと微笑みかけていたこの女性の反応は、この小さな叫び声には、全く反応を示さなかった。微笑んではいても、そこははっきりと分かった。

瞬時に人違いだということを悟った私は、「すみません、人違いでー」と頭を下げた。

「あ、」彼女は軽く了解の声を漏らして、風のように通り過ぎた。

「ワーッ!」という最初の歓声で大きく出てしまっただけに、穴があったら入りたいと思ったが、なんと良く似た人というものが、世の中にはいることか。
丸顔に、ちょっとエキゾチックな大きな目、その顔立ちは彼女に酷似している。
てっきりTさんだと思ってしまった。

そこではっと気が付いたのは、彼女が今現在、あれほど若かろうはずはない、ということだった。
子供が小学校の頃は、お互いに若かった。もうあれから、かれこれ10数年もたっている!
それにその後、何度も見かけてはいる。自分もそうだが、ちゃんと年相応になっている。

それを彼女だと疑わなかったのは、その女性がこちらにはっきりと笑いかけていたことと、それから桜時の、何か少しくらい不思議なことがあってもおかしくないような、そんな魔力のせいだったのかもしれない。

それにしても彼女は何故私に微笑みかけていたのだろう。あんなにもはっきりと。
桜に酩酊して、フラフラ歩いているいい大人を微笑ましいと思ったのだろうか。何だか顔が赤くなる。

それから私は中学校に入って行くと、桜に浸かった。
どうせ見たように映らないから、携帯で撮るのはやめた。
大きな桜だから、神聖な雰囲気もあって、見ても見ても、まだ見つくしていないような気持ちになるのだった。

桜を見に来ている人の中に、一人で来ている男性が二、三人いた。
そのうちの一人が、私と同じくらいの年齢なのだが、他の人とは様子が違っていた。
桜の大木を仰ぎ見ながら、躊躇無く、ぴたりと立ち止まり、少し歩いては、また立ち止まるので、後ろから歩いて来る他の男性が、戸惑っているのだった。

それは私が多分夢遊病者のようにふらふらしているのとは、全く異質な状態なのだろうと思う。
彼は堂々たる確信を持って、何かを発見していた。
発見するたびに、足がぴたりと止まった。
そして、自分の1メートルくらい先の地面に、大きなリュックをバン、と投げ出すと、やおらかがみこみ、リュックの上のポケットから一眼レフのカメラを取り出した。

なあるほど。
写真家の眼が発見する桜は、私の見ている桜とは、またかなり違う桜なのであろう。
あの確信に満ちた躊躇の無い立ち止まり方が、私は羨ましかった。
それは私の、心ここにあらずといった立ち止まり方とは、随分と違っているような気がした。
「これだ!」と思った時、彼の心はカメラのレンズと同じように、はっきりと焦点が合っているに違いない。

色んな人の、色んな桜。老若男女それぞれの桜。今夜は皆の眼の中に、桜が棲みついて、この町は本物の夜桜と桜の残像で、さぞかし華やいでいるに違いない。

帰ってしばらくすると、紫の虚血性肩こりは大分楽になってきた。
陽の光も、風も、人声も、何でもしんみり吸い込むように咲いていた桜が、吸い取ってくれたのかもしれない。

そんな気分になる夜だった。








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コメント

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Re: No title

わかります。私も同じです。下痢が続いたり、関節が痛んだり、手を替え品を替えって感じですよね。
普通に考えると、厳寒の時の方が体調悪くなりそうなのに、暖かく、気持ちよくなってくると、色々起きるんですよ。
春と秋ですね。あとは落ち着きます。
ホント、なんか不思議です。気温の変化も、最近は階段2段飛びー!みたいな感じですからしょうがないんでしょうね。

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Re: No title

コメントありがとうございます。
いい方向に物事が動くことをお祈りしています。

私も何かあると、目一杯動揺してしまうほうなんです。どこが還暦間近なのか甲斐の無い人間で。
「四十にして惑わず」なんてなんかの間違いじゃないのかと。
心配性に聞く漢方薬とかないのかって本当に思います。

でも時間が経つと、何か違う方角から思いがけない風が吹いてきて、それで事の成りゆく方向が変わったりします。

自分の力だけで何ともならないことは、しょうがないからじっとして、そういうものを待ったりしています。
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いつもご訪問頂きありがとうございます。 「俳句とエッセイ時々音楽」のブログ名を、「A Cup of俳句」に改名させていただきます。宜しくお願いいたします。

プロフィール

ネコヤナギ

Author:ネコヤナギ
俳句は一行詩。コンパクトな宇宙です。それと日々出会う物・事を気ままに綴り、ジャンルにこだわらない音楽のことも少し。俳句は1994年から書き溜めていたものを2017年1月から遡ってまとめました。
60代突入・主婦時々グラフィックデザイナー。在宅ワーカーです。
趣味は俳句・ガーデニング・音楽・デザイン。

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