秋風・金木犀その他

秋風

201710c.jpg


秋風に石膏像の無言かな



夜道行くもうひとりいて秋の風



秋風やキリコの影を追っている
  
ジョルジョ・デ・キリコの絵が、10代の頃とても好きで、画集から切ってしまって、壁に貼ったりしていた。

キリコの絵の特徴は、誇張された遠近感と、光と影だ。
とくに「影」が主人公なのではないだろうか。

神殿の影、人間の影、建物の影、彫像の影、とにかくそのくっきりとした大きな影たちが、どういうわけか私を安堵させるのだ。
よくキリコの絵は不安を感じさせるというけれど。

郷愁を誘うというか、デジャブを感じるというか、夜見ている夢の空間や世界が、実はずっと、後頭部の一部に存在していて、そちらでももうひとり私が生きている、その場所、そんな感じなのである。

そして、キリコの世界の光と影の感覚は、秋の空気感を持っている。
ひとつの物体に、明暗がくっきり現れて、透明な空気がいやがおうにもそれを引き立てる。

しんと引き締まった、「秋冷」、そんな空気を感じるのである。



秋の風悲喜こもごもつかずはなれず



コンビニで立ち煙草して秋の風



秋風やいろんなことに距離を置く








応援お願いします。
にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ
にほんブログ村





金木犀・その他

201710d.jpg
今日の1曲 /  Keith Jarrett  Danny Boy


木犀香甘き螺旋をのぼりゆく



天すこし降りて来てゐる金木犀



金木犀いましばらくは恋の中



門灯にまだ暮れきらず金木犀



秋冷るひとつの石にひとつ影



秋夕暮れ洋服少し重くなる



満月や眼球疲労してをりぬ



満月に支離滅裂な我の夢



秋灯しひとの家にはありそうな



天高く我が影掘れば迷路かな



曼殊沙華西陽の影の皆長く

近所の線路わきの彼岸花は、よく写真で見るような燃えるような真紅ではなく、ちょっとアースカラーの煉瓦色がかった赤で、見るなり私は市松人形がそっと置かれているような、そんなイメージを持った。

アンティークな着物のような色味だったからだろうか。丁寧に精巧に作られたような、凝った形をしているからだろうか。

「市松人形」というと思い出す漫画がある。
といっても、怖い話ではない。
内田善美という漫画家の「草迷宮・草空間」という漫画で、道に捨てられていた市松人形を拾う羽目になった大学生の男の子の話。

のっけから人形は喋っていたので、てっきり捨て子かなにかと思っているのだけれど、実は人形という設定。
人形なのだけれど、「愛」を感じると、人間に近くなってくる、という感じの物語。
捨てられていて、最初に野良猫がその人形を不憫に思って、子猫のように抱擁して温めてやる、すると人形の中にも、温かな「愛」が生れてくる。

だが何せもとは人形なので、人間界のことは端から端まで疑問だらけ。
人間の幼児のように、片っ端から男性を質問攻めにする毎日。

そのかわいらしいこと。愛らしいこと、市松人形イコール怖い話というのが徹底的に覆されて、しかも文学性のある、画期的な作品だったと思う。

ある日、あまり人形の質問攻めがうるさくて、ヒステリーを起こした男性が、「人形のくせに、」という言葉で、人形を傷つけてしまう。
するといきなり、今まで血の通った子供のように喋っていた人形が、凍り付いて動かなくなり、本当の人形になってしまうシーンが、とても心に残っている。

何か非常に象徴的なシーンだった。

人形が愛によって、人間になる。
そして傷つくと、人形に戻ってしまう。

ラストは迷子になってしまった人形を探して、やっと古い人形店で見つけた主人公が、ずらりと並んだ動かぬ冷たい市松人形の中から、人間になりかけている人形に手を差し伸べて抱きしめる、というシーン。

主人公が人形に手を差し伸べたとき、巨大な「死」の無機的な連鎖の中に、奇跡のように生命と愛が、ひとつ生れ出る、そんな印象的な場面だ。

そして2人が店の外に出ると、雪が降って来る。

人形が言う。

「たましいが、降って来たよ」。

何故かやたらにそこで泣けてしまう、不思議なハッピーエンドの物語。

緻密に描きこまれた絵は漫画離れしていて、美しい。
古くなって、大分紙が傷んでいるけど、捨てられない一冊だ。









応援お願いします。
にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ
にほんブログ村








スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

お知らせ

いつもご訪問頂きありがとうございます。 「俳句とエッセイ時々音楽」のブログ名を、「A Cup of俳句」に改名させていただきます。宜しくお願いいたします。

プロフィール

ネコヤナギ

Author:ネコヤナギ
俳句は一行詩。コンパクトな宇宙です。それと日々出会う物・事を気ままに綴り、ジャンルにこだわらない音楽のことも少し。俳句は1994年から書き溜めていたものを2017年1月から遡ってまとめました。
50代後半、双子座・A型・主婦兼グラフィックデザイナー。在宅ワーカーです。
趣味は俳句・デザイン・音楽・手織り。最近ホロスコープの奈落に足を突っ込んでいます。

ブロとも一覧

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR