11月 シャコンヌ(2016)


ヨー・ヨー・マとキャサリン・ストット(
Yo-Yo Ma&Kathryn Stott ) 「Ave Maria
ヨー・ヨー・マは1955年生まれの中国系アメリカ人。
父親はオーケストラの指揮者・作曲家。母親は声楽家という家庭で生まれ、4歳からチェロを始める。8歳でレーナード・バーンスタインのオーケストラでテレビ出演したという。
深みがあって、繊細で、自由な音色。森を渡る風のような。




三面鏡の中にクレーン天高し

三面鏡というのは、時々小さな驚きをプレゼントしてくれる。
思わぬ角度に開けたままになっていると、思わぬものが映っているから、いつも同じ見飽きている部屋の中に、
微かな異次元のようなものを出現させる。


一本の木の明暗が秋の貌


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私の好きな曲   前橋汀子 TEIKO MAEHASI / バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ(1989)より 「J. S.Bach BWV 1004 5. Chaconne」

バッハのシャコンヌという曲は、時々耳にするが好きになれなかった。
アグレッシブで、ヒステリックな感じもして、なにか気持ちに沿わないところがあった。
だが、ある午後、家のものが出払っていて、晩秋の光のなか、たったひとりで窓から見えるいつもの木をぼんやりと見ていた時、たまたま流れてきた前橋汀子のシャコンヌに、私は金縛りにかかったように魅了されてしまった。その後、同じ曲で少し検索して何人かの著名なバイオリニストのものを聞いてみたが、どれも私の求めるものから、少しずれているのだった。
重すぎたり、攻撃的だったり、悲愴すぎたり、苦しそうだったり。
前橋汀子のシャコンヌは、孤高なのだけれど、開かれている感じがするのだ。
悲しみや、苦しみや、孤独に、開かれていて、そして流れている。
とにかく水のように、風のように、音が柔らかく流れていて、決して停滞しない。
そしてどこまでも透明なのである。
一本の木をありありと浮かび上がらせている、晩秋の午後の光と影と、前橋汀子のシャコンヌ。
このどちらがかけても、この感動はなかったかもしれない。





柿重くみっしりと忘却が実る

しばらく歩かなかった近所の道で、みっしりと柿がなっている大木のある家に遭遇して、驚いた。
物凄い「郷愁」を感じたからである。
息苦しいように密に実っている柿、それを突きに来ている2羽の鴉、
そして曇天。完全に谷内六郎の世界といえばそんな風だ。
そういってはなんだが、箱庭的な松竹梅とか、和菓子のような花鳥風月とか雪月花とか、そういう刈り込まれた植木のような美学の方向性には全く心を動かされないたちである。
「紋切型」というものが大嫌いで、「感性」というのは、そこから一番遠いところにある、と思っている。
紋切型の俳句ほど退屈なものはない。
私は考えた。
生家にも、その次に住んだ家にも、その次も、庭に柿の木なぞはありはしなかった。
中途半場な地方都市の街中で育ち、身の回りにある自然といえば、人の家の庭や公園にあるものくらいだ。
出不精で方向音痴だから、旅行といってもたかが知れているし。

ではこの強烈な「デジャブ感」は、いったいどこから来るのだろう。
日本人としての集合無意識のようなものと言ってしまえばそれまでだけれど、
桜を見ても、紅葉を見ても、富士を見ても、松を見ても梅を見ても、、私は郷愁というものを感じない。
それはいつも、今現在の桜であり、梅であり、記憶の中のイメージと重層したりしながらも、それを束ねているのは、新しい、それそのもの、なのである。
なぜ、柿だけが、私の心の深い地層の下の方から、ありありと明確な「郷愁」を掘り出してこられたのか。

それにしても我ながらもっと不思議だったのは、柿の木は、沢山のものを「忘れている」ように、見えたということ。
柿の数だけ、沢山の忘却が密集して実っているように、見えたのだ。


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十一月の夜景に宙づり意識のみ

久しぶりに買い物に出た。ちょくちょく行っている同じデパートの同じエレベーターにのる。
これは観覧車のように、透明な窓から外が望める。
エレベータの中は、私ひとりだった。
まだあたたかい十一月の久しぶりの夜景だった。高所恐怖症なのだけれど、条件によっては平気なのだ。
町の光の氾濫している眩しさの中を、ぐいぐい一挙に高みに上ってゆく心細さと高揚感がないまぜになって、自分も意識だけになってしまったような。




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いつもご訪問頂きありがとうございます。 「俳句とエッセイ時々音楽」のブログ名を、「A Cup of俳句」に改名させていただきます。宜しくお願いいたします。 また、当ブログ内に埋め込んでいた音楽配信動画のうち、違法にアップされたものは削除いたしましたが、公認されているものも色々ありましたので、再度少しづつ載せていきたいと思います。ジャズ・ロック・クラッシック、ジャンルは問いませんが、心に沁みるアコースティックなものをコラボ。

プロフィール

ネコヤナギ

Author:ネコヤナギ
俳句は一行詩。コンパクトな宇宙です。それと日々出会う物・事を気ままに綴り、ジャンルにこだわらない音楽のことも少し。俳句は1994年から書き溜めていたものを2017年1月から遡ってまとめました。
50代後半、双子座・A型・主婦兼グラフィックデザイナー。在宅ワーカーです。
趣味は俳句・デザイン・音楽・手織り。最近ホロスコープの奈落に足を突っ込んでいます。

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