6月 テア・ギルモアと朝焼け  (2015)

一ページ読む間の空の明け易し



ラ・カンパネラ空の全ての扉開く



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久しぶりにこの曲を聞いた。
凄い曲である。途中下車できないのである。
ちょっと飲み物を取りに、なんてとんでもない。
息つく間もなく、最後の一音まで、曲に巻き込まれて、連れて行かれるのである。
前はフジコ・ヘミングのラ・カンパネラをよく聞いた。
今日は偶然ネットで辻井信行の演奏を聴いた。
素晴らしかった。
だが、フジコの方が男性的というか、硬質な音で、
辻井の方が、女性的な、繊細な音だった、
蝶の羽の幽かな羽ばたきのような、優しく繊細なオクターブだった。




母訪えば途切れぬ話虹すこし

近所に住む一人暮らしの母に夕食を持ってゆくと、喋りっぱなしである。
もちろん、ひとりで喋っているわけではない。こちらも喋りっぱなしということになる。
母は時々喋りすぎで苦しいとかなんとか言いながらも、それでもしゃべっている。
それをいきなり途切らせたのは、虹である。
「あっ、虹!」。  しばし、二人に沈黙が訪れる。



羊歯萌ゆる古き話を母として

どのくらい古いかって。今日は新円切り替えの話が出たので、私などには、ただ珍しいばかり。
母が8歳の時には太平洋戦争が始まっているし、その時同じ年だった祖母と祖父は37歳。1代,2代違うだけで、身を取り巻いている世界の、なんという違いだろうか。
しかし82歳の母は、細々と学んだパソコンで、自分のエッセイを書いている。



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紫陽花や夢の四隅の埃かな



百合の影踏めばつめたき畳かな



明け易しふたたび夕べとなるごとく



テア・ギルモア朝焼けの沈殿する瞳




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仕事をしながらインター・ネットラジオを聞いていたが、流れてきた女性ボーカルに、思わず手が止まった。
サンディ・デニー?いや、違う。サンディの声は、哀愁は帯びてはいるが、もっと牧歌的で、力強いところもある。
それより、もう少しフラットな感じでもう少し透明感がある。
私は慌てて眼鏡を取ってくると、アイ・チューンズの薬の効能書きのように小さな字の、アーティストと曲目に
目を凝らした。
テア・ギルモア ・・・ 聞いたことの無い名だった。
私はYou Tubeで彼女の曲を追いかけてみた。
初期の頃の曲はあまり好きとは言えないが、最近のものは皆よかった。
ディランや、CCR、リンダ・ロンシュタット、ジョーン・バエズなどの曲が彼女のナイーブな声でカバーされていた。
両親が好きで聞いていたのを、彼女も好きになったという、そういう世代らしい。
でもジョーン・バエズの方も、彼女の曲をカバーしたというから、すごい。

サンディ・デニーの遺した歌詞に彼女が曲をつけたものもあった。この曲もなかなかいい。
彼女はサンディが亡くなった翌年に生まれている。
サンデイの歌は、下から上へ上昇するような調子があるのだが、彼女の歌は、水のように、上から下へ、落ちて来る。どこにも気張った感じが無いというか。
サンディの声に似ているわけではない。
でも真っ先にサンディを思い浮かべたのは、その声が感じさせるアイリッシュ特有の陰影のある郷愁が、彼女と同質のものだったからだろう。
一番気に入ったのは、オールド・ソウルという曲。これはオリジナルだと思うけど。

ふと窓に視線を移すと、夜が明け始めている。
こんな時間に寝るのではなく、こんな時間に起きるのだったら、どれほど素敵だろうと思いつつ、東側の部屋に
行き、カーテンを引く。
エミール・ガレの硝子のように見事な朝焼けが広がっていた。
家々や木々のほとんどはまだ黒い影でしかない。
朝焼けと夕焼けの決定的な違いは・・・大きく息を吸いながら、私は考えた。
この怖いくらいに澄みきった大気の感触なのた。
夕焼けの時間の、こなれた空気とは違って、この時間の空気は、何物にもまだ汚されていない。
ひんやりと翳っていて、濃く、純粋だ。
気体なのに、水のように、濃密に肌に纏わりついてくる空気。
  
そこまで考えて、ふと気がついた。
まさに、そんな声。まさに、この感触。
声量があるというのとは違う。回りくどい表現の演出がされているわけでもない。
テア・ギルモアの声はただ、暁の大気さながら、濃く、純粋で、自分に対して混ざり気が無い。
そして夏木立のような豊かな翳りがあって、水のように、自在だ。




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いつもご訪問頂きありがとうございます。 「俳句とエッセイ時々音楽」のブログ名を、「A Cup of俳句」に改名させていただきます。宜しくお願いいたします。

プロフィール

ネコヤナギ

Author:ネコヤナギ
俳句は一行詩。コンパクトな宇宙です。それと日々出会う物・事を気ままに綴り、ジャンルにこだわらない音楽のことも少し。俳句は1994年から書き溜めていたものを2017年1月から遡ってまとめました。
50代後半、双子座・A型・主婦兼グラフィックデザイナー。在宅ワーカーです。
趣味は俳句・デザイン・音楽・手織り。最近ホロスコープの奈落に足を突っ込んでいます。

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