1月 冬の田園(2008)

立ち止まり初めて冬の山と会う

旅に出ても、せかせかと、目的地に着くことばかり考えて歩いていると、その実何も本当には見ていない。
あるいは感じていない。表面的な意識の上を、風景はすべるばかりである。
立ち止まる。しばらくは先に行くことを考えない。
すると忽ち見えてくる。木の枝、梢、空、雲、鳥。


少しずつ西日抱きて冬の山

帰り道、車道の片側を過ぎていく小さな山々が、少しずつ少しずつ、今にも消え入りそうな西日を抱いている。
ほどなく沈んでしまう淡い冬の西日を、皆で愛おしんでいるかのように。
やがて、空も山も、煙るような赤紫になっていく。


冬の田に休めば光満ちてをり



冬枯れに沼の瞳くらく見開きぬ

枯れ色一色の枯野の中に、遠く小さな沼が見えた。
その色は、紺とも違う、青とも違う、そう、納戸色というのがある。青緑の明度と彩度をぐっと落とした、鈍い色。マックス・エルンストの絵に、こんな色の湖があったような気がする。
乾ききっている万物の中で、冬の瞳があいているような、ひときわ印象に残る沼の色だった。


夫先に行かせ仰げば松梢



枯野行く我も冬景色となりぬ




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水仙香ちさく濃く夜半の孤独

夜中に家族が寝て、一人夜更かしをしていると、やっと個人の自分に戻れたような気がして、一息つく。
水仙に顔を近付けると、濃密な香りが、もっと自分を思い出せ、思い出せ、と言っているような。


大寒の物音を聴く風呂の中



スーパーの前の裸木克明に

スーパーの照明というのは、何でも無残なほど克明に照らし出す。野菜も果物も、人間も、日常も。


初雪を少しく残し屋根眩し



寒月や孤独の記憶洗い出し



ポケットにメール舞い込む冬茜



冬の雨一戸一戸に音もなく

時雨である。細い針のような雨が、しめやかに音もなく降っている。家々は眠っているような、考え事をしているような、何かを思い出そうとしているような。



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お知らせ

いつもご訪問頂きありがとうございます。 「俳句とエッセイ時々音楽」のブログ名を、「A Cup of俳句」に改名させていただきます。宜しくお願いいたします。 また、当ブログ内に埋め込んでいた音楽配信動画のうち、違法にアップされたものは削除いたしましたが、公認されているものも色々ありましたので、再度少しづつ載せていきたいと思います。ジャズ・ロック・クラッシック、ジャンルは問いませんが、心に沁みるアコースティックなものをコラボ。

プロフィール

ネコヤナギ

Author:ネコヤナギ
俳句は一行詩。コンパクトな宇宙です。それと日々出会う物・事を気ままに綴り、ジャンルにこだわらない音楽のことも少し。俳句は1994年から書き溜めていたものを2017年1月から遡ってまとめました。
50代後半、双子座・A型・主婦兼グラフィックデザイナー。在宅ワーカーです。
趣味は俳句・デザイン・音楽・手織り。最近ホロスコープの奈落に足を突っ込んでいます。

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